リフォーム店の電子帳簿保存法対応 — メールで届く請求書・領収書PDFの正しい保存方法
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「メールで届いた請求書、いつも印刷してファイルに綴じているけど、これで合っているんだろうか」——リフォームの現場と事務を両方回していると、こういう小さな不安は後回しになりがちです。ですが、電子で受け取った請求書や領収書のPDFは、印刷して綴じるだけでは保存義務を満たさない、というのが今のルールです。
この記事では、電子帳簿保存法のうち「電子取引データの保存」に絞って、リフォーム店・工務店が押さえておきたい要件と、規模の小さい店が使える緩和措置を、事務の実務目線で整理します。
メールで届いた請求書PDFは印刷して保存すればいい?
直答: いいえ。電子で受け取った請求書・領収書のPDFは、電子データのまま保存する義務があります。印刷して紙で綴じ、元のデータを消してしまう運用では要件を満たしません。
電子帳簿保存法には大きく3つの区分がありますが、すべての事業者に関係するのが「電子取引データの保存」です。ここでいう電子取引とは、たとえば次のようなやり取りを指します。
- メールに添付されて届いた請求書・領収書のPDF
- 仕入先やECサイトの管理画面からダウンロードした請求書・納品書
- クラウドサービス上でやり取りした注文書・見積書
こうした「最初から電子で受け取った書類」は、電子データのまま保存するのが原則です。2023年末までは印刷して紙で保存することも認められていましたが(宥恕期間)、2024年からは電子取引データを電子のまま残すことが求められています。紙で受け取った請求書をスキャンする話(スキャナ保存)とは別の区分なので、混同しないのがポイントです。
電子保存の基本要件は「改ざん防止」と「検索できる状態」
直答: 電子取引データの保存で求められるのは、大きく「改ざん防止の措置」と「日付・金額・取引先で探せる状態」の2点です。
具体的には、次の要件を満たす必要があります。
- 改ざん防止の措置: タイムスタンプの付与、訂正・削除の履歴が残る(またはそもそも訂正・削除ができない)システムでの保存、または「訂正・削除の防止に関する事務処理規程」を定めて運用する、のいずれか。小規模な事業者は、国税庁がひな形を公開している事務処理規程を整備する方法が現実的です。
- 検索できる状態: 「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できるようにしておくこと。
- ディスプレイ・プリンタ等の備付け: 税務調査などで求められたときに、画面表示や書面出力ができる状態にしておくこと。
このうち事務の負担として大きいのは、2つ目の「検索できる状態」です。ただ、これは専用システムがなくても、ファイル名の付け方とフォルダ整理で対応できます。次の章で見ていきます。
売上5,000万円以下なら検索要件がぐっと軽くなる
直答: 基準期間(2年前・法人は2期前)の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務職員によるデータのダウンロードの求めに応じられるようにしておけば、検索要件そのものを満たす必要がなくなります。フォルダ整理とファイル名の工夫で対応できます。
多くの1〜10人規模のリフォーム店は、この緩和措置の対象に入ります。専用の会計ソフトや文書管理システムを入れていなくても、次のように運用すれば足ります。
- 受け取ったPDFを、月ごと・取引先ごとのフォルダに保存する
- ファイル名を「日付_取引先_金額」の形にそろえる(例: `20260731_○○建材_82500.pdf`)
- 元データを削除・上書きせず、そのまま残す
ファイル名を「日付・取引先・金額」で統一しておくと、あとからフォルダ内を目で追うだけでも該当の書類にたどり着けます。命名ルールを1つ決めて、受け取ったその日にリネームして保存する——この一手間を習慣にできるかどうかが、実務上の分かれ目になります。
なお、売上5,000万円超の場合でも、電子取引データを印刷した書面を日付・取引先ごとに整理して提示できるようにしておけば、ダウンロードの求めに応じることを条件に検索要件が免除される道もあります。「印刷して綴じる」習慣そのものは無駄にならず、元の電子データを消さないことが肝心、と覚えておいてください。
まだ対応できていなくても、あわてなくていい(猶予措置)
「システムも規程もまだ何も用意していない」という場合のために、猶予措置も設けられています。所轄税務署長が「相当の理由」(システム整備が間に合わない、など)があると認める場合には、税務調査の際にデータのダウンロードの求めと出力書面の提示に応じられるようにしておけば、改ざん防止や検索要件への対応が整うまでの間も、そのまま保存しておくことが認められます。
ただしこの場合も、電子データ自体を消さずに残しておくことが大前提です。「対応が間に合わないから印刷だけして削除」は猶予の対象になりません。
リフォーム店が今日からできる3ステップ
制度の全体像がわかったら、あとは自社の運用に落とすだけです。難しく考えず、次の順番で進めるのがおすすめです。
- 受け取り経路を洗い出す: 請求書・領収書が、メール/クラウド/郵送のどれで届いているかを一度書き出します。電子で届いているものが、電子保存の対象です。
- 保存場所とファイル名のルールを1つ決める: 「日付_取引先_金額」のような命名ルールと、保存先のフォルダ構成を決めます。凝る必要はなく、続けられる形が一番です。
- 改ざん防止の措置をそろえる: 事務処理規程のひな形を整備するか、履歴が残る形で保存できるサービスを使います。
見積・請求まわりをアプリで作っている場合は、作成した請求書PDFがアプリ内に日付付きで残るため、「自社が発行した側」の書類は探しやすくなります。リフォラクでも見積から請求書への変換で作った請求書は日付付きで一覧に並びます。一方で、仕入先から受け取った側のPDFは自分でルールを決めて保存する必要があるので、この受け取り分の運用こそ、早めに型を作っておきたいところです。
電子化は節税にもつながる — 2027年分からは控除が75万円に
事務の電子化は、手間を減らすだけでなく、節税にも直結します。青色申告をしている個人事業主の場合、複式簿記に加えてe-Taxでの電子申告(または優良な電子帳簿の保存)などの要件を満たすと、青色申告特別控除が最大65万円まで受けられます。
さらに2027年(令和9年)分以後の所得税からは、この控除が最大75万円に引き上げられます。優良な電子帳簿に加えて電子取引データを訂正・削除履歴が残る形で保存するなどの要件を満たし、あらかじめ届出書を提出しておくことが条件です(すでに優良な電子帳簿で65万円控除を受けている場合は、改めての届出は不要とされています)。詳しい要件や届出の様式は国税庁の青色申告特別控除のページで確認できます。
いま「日付・取引先・金額」の保存ルールを整えておくことは、義務への対応であると同時に、来年以降の控除アップの下準備にもなる、というわけです。
インボイス制度の経過措置とあわせて、下期の事務まわりを一度点検しておきたい方は、インボイスの8割控除は2026年9月で終了の記事も参考にしてください。
まとめ
- 電子で受け取った請求書・領収書のPDFは、印刷して綴じるだけではNG。電子データのまま保存するのが原則です。
- 基本要件は「改ざん防止の措置」と「日付・金額・取引先で探せる状態」の2点。
- 2年前の売上が5,000万円以下なら検索要件は緩和され、フォルダ整理とファイル名の工夫で対応できます。
- まだ未対応でも「相当の理由」があれば猶予措置あり。ただしデータを消さないことが大前提。
- 2027年分からは、要件を満たして届出をすれば青色申告特別控除が最大75万円に。
- まずは受け取り経路の洗い出し → 命名ルールを1つ決める → 改ざん防止をそろえる、の順で。
(本記事は2026年7月時点の情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の対応は所轄の税務署・顧問税理士にご確認ください。出典: 国税庁 電子帳簿保存法特設サイト・「電子取引データの保存方法をご確認ください」(令和6年11月)・「帳簿の電子化に取り組みましょう」リーフレット)
名古屋市でリフォーム会社を共同経営(2021年創業・5期目)。現場の見積・請求の実務に合わせて、リフォーム店向け業務サービス「リフォラク」を開発・運営しています。
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