改正建設業法で見積書はどう変わった? — 2025年12月からのルールと、許可のない小さな店の向き合い方
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「見積書に労務費を書かないといけなくなったらしい」——業界紙や組合の案内で、そんな話を耳にした方も多いと思います。結論から言うと、2025年12月12日に改正建設業法が完全施行され、見積書の書き方に新しいルールが入りました。ただし、その多くは建設業許可を持つ「建設業者」向けで、許可のない小さな店がどこまで対象になるかは分けて考える必要があります。この記事では、国土交通省の一次情報をもとに、リフォーム店の見積実務に関わる部分だけを整理します。
改正建設業法で、見積書の何が変わったのですか?
直答: 2025年12月12日の完全施行で、建設業者は材料費・労務費などの内訳と工程ごとの日数を書いた見積書(材料費等記載見積書)を作るよう努めることになりました。あわせて、通常必要な額を著しく下回る材料費・労務費での見積りは禁止されています。
今回の改正(令和6年法律第49号)は、2024年9月、2024年12月、2025年12月の3段階で施行されました。国土交通省は2025年11月の報道発表で、最後の段階を2025年12月12日から完全施行すると公表しています。
見積書に関係する主な中身は、改正後の建設業法第20条にまとまっています。
- 内訳を書いた見積書の作成(努力義務): 工事の種別ごとの材料費・労務費・必要経費の内訳と、工程ごとの作業と準備に必要な日数を書いた見積書を作るよう努める(第1項)
- 著しく低い材料費・労務費での見積りの禁止: 見積書に書く材料費等の額は、通常必要と認められる額を著しく下回ってはならない(第2項)
- 注文者から求められたら交付: 注文者から請求があれば、契約が成立するまでに内訳を書いた見積書を交付する(第4項)
- 注文者側の値切りにも歯止め: 注文者は、材料費・労務費が著しく低くなるような見積りの変更を求めてはならない(第6項)
ここで言う「材料費等」には、材料費・労務費に加えて、法定福利費の事業主負担分、安全衛生経費、建設業退職金共済制度の掛金が含まれます(国土交通省 参考資料「改正の背景」)。
背景について国土交通省は、総価一式での契約慣行の中で労務費の相場が分かりにくく、材料費より削られやすかったことを挙げています。「一式」をやめろという話ではなく、手間賃が見えないまま削られる構造を変えたい、というのが改正の狙いです。
建設業許可を持っていない小さな店にも、この新ルールはかかりますか?
直答: 国土交通省の運用方針では、許可不要の範囲で営業する店は、見積書作成の努力義務や著しく低い労務費による見積りの禁止などの適用を直接は受けないとされています。ただし、許可業者と同様に材料と手間を分けた見積りに努めることが期待されています。
建設業法でいう「建設業者」は、第3条の許可を受けて建設業を営む者のことです(第2条第3項)。第20条の見積書作成の努力義務(第1項)は「建設業者は」で始まる規定のため、500万円未満の軽微な工事だけを請け負う許可のない店は、条文の上では直接の対象になりません。500万円の線についてはリフォーム工事に建設業許可は必要?で整理しています。
国土交通省の「『労務費に関する基準』の運用方針」(方針23)もこの点をはっきり書いています。許可不要の事業者は新しい規制の適用を直接受けるものではない、としたうえで、次のように続けます。
こうした許可不要の小規模事業者こそ、本基準を活用して適正な施工に要する労務費を確保することが必要であり(中略)許可業者と同様に適正契約・材工分離の見積りの実施に努めることが期待される。
つまり「義務ではないが、やったほうがいい」という位置づけです。なお同じ方針23は、総価での原価割れ契約を注文者側に禁じる規定(第19条の3第1項)などは、許可の有無にかかわらず建設業を営むすべての者に適用されるとも書いています。
個人のお施主さん相手でも、労務費を分けて書く必要がありますか?
直答: 運用方針(方針53)は、価格交渉で労務費を内訳に示して確保する必要がある場合には、個人発注者が相手でも内訳を示すことが望ましいとしています。義務として一律に求めているわけではありません。
リフォームの見積では、「畳表 ○枚」「クロス ○㎡」のように材料と手間をまとめた単価で書くことも多いと思います。運用方針は、歩掛(作業量あたりの手間)を明かしにくい場合には、労務費の総額を明記するやり方も考えられるとしています。
実務では、いきなり全部を分解しなくても、まず「材料」と「施工費(手間)」を別の行に分けるところからで十分です。お施主さんから「この金額、なんでこんなに?」と聞かれたときに、手間の部分を根拠を持って説明しやすくなります。
見積書の基本的な書き方はリフォームの見積書の書き方にまとめています。
内訳を書いた見積書は、どれくらい保存すればいいですか?
直答: 建設業者(許可業者)は、材料費等記載見積書と契約前の打合せ記録を、工事の目的物の引渡しから10年間保存する義務があります。当初見積書と最終見積書の両方が対象です。
運用方針(方針9・方針45)によると、保存の対象は次のとおりです。
- 当初見積書: 契約の前提となる設計図書などが整ったあと、最初に出した見積書
- 最終見積書: 契約内容の明細を示す見積書
- それに関する契約締結前の打合せ記録
保存方法は、書類管理の負担軽減などの観点から電磁的方法(データでの保存)が望ましいとされています。個人など建設業者でない発注者には保存義務はありません。
許可のない店に直接の保存義務はありませんが、「最初に出した見積」と「最後に決まった見積」を並べて残しておく習慣は、追加工事や値引きの経緯を後から説明するときにも役立ちます。追加工事のときの合意の残し方はリフォームの追加工事、揉めない進め方も参考にしてください。
資材が値上がりしそうなときは、契約前に伝える
もうひとつ、2024年12月に先に施行されたルールがあります。建設業法第20条の2第2項により、建設業者は、主要な資材の供給不足や価格の高騰など、工期や請負代金に影響するおそれがあると認めるときは、契約を結ぶまでに注文者へその旨を通知しなければなりません。
国土交通省は、通知には報道や資材業者の記者発表、公的な統計資料など客観的な根拠情報を添え、見積書の交付時などにあわせて行うこと、通知書面やメールを双方で保存しておくことが望ましいと案内しています。通知したうえで実際に値上がりが起きた場合、代金の変更協議を申し出ることができ、注文者は誠実に協議に応じるよう努めることになります(同条第3項・第4項)。
リフォームでも、メーカーの値上げ告知が出ている建材を使う工事では、見積書の備考に「○月以降の価格改定が発表されています」と発表の出所つきで一行添えておくだけで、後の話し合いがずっとしやすくなります。
まとめ
- 改正建設業法は2025年12月12日に完全施行。見積書のルールは主に第20条
- 建設業者(許可業者)は、材料費・労務費などの内訳と工程ごとの日数を書いた見積書の作成が努力義務。著しく低い材料費・労務費での見積りは禁止
- 内訳を書いた見積書と打合せ記録は、許可業者なら引渡しから10年保存(当初・最終の両方)
- 許可のない小さな店は直接の適用対象ではないが、材料と手間を分けた見積りに努めることが期待されている
- 資材の値上がりが見込まれるときは、契約前に根拠つきで伝えておく
いきなり様式を全部変える必要はありません。まずは材料と施工費を別の行に分ける、出した見積を消さずに残す——この2つから始めるのが現実的です。リフォラクでは、見積の明細を材料と施工費の行に分けて入れられ、打合せで受け取った図面や書類を案件ごとに保存しておけます。
※本記事は2026年9月26日時点で国土交通省・e-Gov法令検索が公表している情報をもとに、実務の考え方を整理したものです。自店が建設業者にあたるかどうかや、個別の見積・契約の判断は、許可行政庁(都道府県・地方整備局)や行政書士などの専門家にご確認ください。
出典
- 国土交通省 報道発表「持続可能な建設業の実現のため、建設業法等改正法が完全施行されます」(令和7年11月14日)
- 国土交通省「建設業法・入契法改正(令和6年法律第49号)について」
- 国土交通省 参考資料「改正の背景」(新ルールの概要)
- 国土交通省「『労務費に関する基準』の運用方針」(令和7年12月・令和8年6月最終改正)
- 建設業法(e-Gov法令検索)
名古屋市でリフォーム会社を共同経営(2021年創業)。現場の見積・請求の実務に合わせて、リフォーム店向け業務サービス「リフォラク」を開発・運営しています。
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